腰椎側面

 腰痛は様々な内臓疾患、あるいは全身的な疾患で生じることもあります。 通常の腰痛と少しでも異なった痛み方のパターンであれば、精査を行う必要があるでしょう。

(1)尿管結石
 体を動かすと痛むので通常の腰痛に似ていますが、 どのような動作で痛くなるかはっきりしないことが多く、 圧痛点を探してもよくわかりません。 この点で、通常のぎっくり腰などとは異なります。 痛む側の背中をトントンと叩くと痛みがひびきます。 これは尿管の中で石が動くと痛みを誘発するからです。

(2)解離性大動脈瘤
 高齢者で急に腰が痛くなったときは要注意です。 高齢者だけにレントゲンでは年齢的な変化が見られるので、 つい腰椎疾患かと思って誤診してしまうこともあるようです。 これも圧痛点などハッキリしないことが多いので、 怪しいときにはすぐにCT検査をすべきです。 解離性大動脈瘤が破裂すると多くが致命的となります。

(3)子宮など骨盤内臓器の疾患
 子宮や卵巣などの疾患による痛みは下腹部痛であることもあるし、 腰痛となることもあります。具体的には、子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣のう腫 などです。 月経周期に関連して痛むことも多いので、通常の腰痛とは違うと予想がつきます。 ただ、一定期間を除けば痛みは少ないので痛み止めで誤魔化してしまう人が多いようですが、 きちんと婦人科を受診したほうが良いでしょう。


内臓疾患と間違われる腰背部痛?

 時々、こんな例が見られます。

「胃が痛いのに胃薬が効かない。内視鏡で調べてもらっても異常が無い。」

 これは筋・筋膜性腰痛である可能性が高いのです。 それというのも、腸腰筋などは腰椎の前方にあり、胃とは近い位置にあります。 ですから、深部にある筋肉が痛むと胃の症状と思ってしまうことがあるのです。 この場合、胃の裏側の腰部をグッと押し込むと疼痛が誘発されるので診断がつきます。
かつて「胃が痛いのなら、痛み止めを飲みなさい。」 と言ってロキソニンを出した藪医者がいました。 通常ならロキソニンは胃に負担となるはずなのに痛みが治まったとのことです。 これは恐らく胃の症状では無くて腰痛だったのであって、 間違った処方がたまたま効いたということになろうか思います。
 その他、「背中が痛くて胸が苦しい」といって内科を受診した人が、 狭心症と診断されニトロを飲んでも効かず、 心電図にも異常は無かったということがありました。 この人の場合は単純に背筋の痛みで、 トリガーポイント注射をしたらすぐに痛みは無くなりました。

腰背部痛は、常に内臓疾患も念頭に置く必要がありますが、逆もあるということです。



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