腰の骨は原則として5個ありますが、そのひとつひとつが、
後ろのほうで左右一つずつの関節(椎間関節)でつながって
います。この椎間関節に障害が起きて腰痛を生じている場合
に、ここへ局所麻酔剤(ときにステロイドを添加)を注入する
のが椎間関節ブロックです。
しかし、これについていくつかの問題点があります。ひとつ
は椎間関節性腰痛という診断を下すこと自体が難しいことで
す。その理由は
1)レントゲンやCT、MRIで椎間関節が痛んでいたとしても、それが痛みの原因になっているとは限ら
ない。
2)腰を後ろに反らせて(つまり椎間関節に負荷をかけて)腰痛が再現されたとしても、必ずしも椎間関節
性の腰痛とは限らない。このとき筋肉が収縮して起こる筋・筋膜性腰痛の可能性もあるし、神経根が
刺激されて疼痛を生じている
(あるとすれば神経根性腰痛)かもしれない。
もうひとつは、関節痛は関節内だけで起こっているのではないう点です。
それは例えば膝の痛みは、関節内だけでなく関節をつなぐ靭帯や周囲の筋肉の付着部の痛みが
合併しておこっているわけです。そうなると椎間関節性の腰痛と筋・筋膜性腰痛の
区別がますます難しいということになります。
それではどうするか?
理論的に考えるならば、まず圧痛点を調べ、それが存在すれば筋・筋膜性の腰痛と考えて、トリガーポイント注射を行ってみる。
圧痛点がなければ椎間板性腰痛か、神経根性の腰痛の可能性のもとに硬膜外ブロックを行う。それでも
効果が無い場合は、椎間関節性の腰痛と考えて椎間関節ブロックを行うといった手順でしょう。なぜ椎間関節ブロックを
最初に行わないかというと、どの関節か見当つけるのが難しいことと、X線による透視(できればX線照射は避けたい)
を行いながらしなければ正確に関節内に注入を行うのは不可能だからです。
(私の経験した範囲では、椎間関節性腰痛と断言できた例はほとんどありませんでした。)