よく耳にする物療とは物理療法の略です。温熱療法・牽引・電気治療など
がありますが、腰痛に対する治療効果としては基本的には血流改善と筋弛
緩です。したがって、筋・筋膜性腰痛に対しては適切に行えばある程度の
効果は得られます。
A.温熱療法
加温の種類としては、ホットパック・赤外線・マイクロ波などがあります。
温めることにより次の効果があります。
@ 局所の血流を改善する。
A 関節を柔らかくしたり、筋肉を弛緩させる。
ところが、冷えるとまた元に戻ってしまいます。ですから、温めるだけでは
治療になりません。温熱療法の目的は、ストレッチなどの治療がスムーズ
にできるようにするための準備、というわけです。
ただし、急性期(腰痛の起こり始め)に腰をあたためるとかえって悪化しますのでご注意ください。
なお、低出力レーザーを用いた治療も、内容的には温熱療法です。
これを用いた星状神経節ブロックというのもあるようですが、本当に効果があるのでしょうか?
B.牽引療法
牽引療法とは腰を引っ張る治療ですが、賛否両論あります。牽引により腰部の筋群が
弛緩するという意見と、かえって硬直するという両方の意見があります。
これも症例によって異なるのでしょう。ただし、牽引により椎間板が広がるとか、それに
よって症状が改善するとかいう理論は、信憑性に乏しいと思われます。
なお、温熱療法と牽引療法については、次の文献をご参考下さい。
日本腰痛学会雑誌Vol.11(2005),No.1 pp.97-101
C.電気治療
電気治療とは、電気刺激により疼痛を軽減する治療です。
電気刺激の種類によって次のような様々な種類があります。
1.SSP(Silver Spike Point の略)
これは低周波刺激を、経穴(いわゆるツボ)に加えて疼痛を改善しようというものです。
整形外科医院や整骨院などで広く行われており、確かに有効な場合もあります。
<参考>日本メディクス・ホームページ
2.中周波、EMS(Electric Muscle Stimulation)
これはSSPと異なり、直接筋肉に刺激を加えて筋収縮を行わせようというものです。
これによる効果としては
@筋収縮によるマッサージ効果
A筋収縮による筋力アップ
です。また、バイオフィードバックという理論を用いて、麻痺の生じた筋肉を再教育するといった
治療を行うこともできます。
3.干渉波
周波数の異なる搬送波を身体に流すと、干渉しあう領域に干渉低周波が発生します。
それを利用して行う低周波治療法です。機種によりSSPと同様な効果を目指したものと
EMSに類似した効果を与えようとするものがあるようです。
ところで、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などに対して物療は効果あるのでしょうか?
残念ながら、物療によって椎間板ヘルニアが引っ込んだとか、脊柱管の狭窄部が広がったとかいう
信頼できる報告はありません。これらの疾患に対する物療の意義は、腰そのものに対するというよ
りも、これらの疾患によって生じる殿部〜下肢の症状を緩和するという意味合いが強いのです。
ですから腰部脊柱管狭窄症だからといって腰に直接治療を加えるのはあまり意味が無いのです。