腰痛に対する16のアプローチ


編 集:医道の日本社編集部
出版社:(株) 医道の日本社

 「医道の日本社」は、数多くの代替医療に関する書物を出版しています。
その編集部が16の施設を取材するという形で編集されています。時として
お金を出して取材をしてもらうという、いわば広告のようなものも多いので
すが(グルメ雑誌などはこの類)、この本のいくつかの章では「なるほど」
と思う内容がありました。一方「うーん」と思うような部分もありますので、
注意して読まれたら良いと思います。



 ここでは次に示す16のアプローチそれぞれについて、同感できる部分(マーク)、 納得いかない部分(マーク)を抜き出し、簡単なコメントを付けました。 これは私個人の考えであり賛否両論あると思いますが、そんな場合は是非御意見をお寄せ下さい。

 1.PNFと腰痛 (b-studio in GINZA、大前優子・安達卯人)
 2.オステオパシーと腰痛  (堤整骨院 堤一郎)
 3.キネシオテーピング法と腰痛  (加瀬治塾 加瀬建造)
 4.カイロプラクティクと腰痛  (ホリスティックヘルス研究所大谷治療室 大谷素明)
 5.軟部組織に対する手技療法と腰痛  (高野台松本クリニック 松本不二夫)
 6.大臀筋の秘密と腰痛体操  (東京厚生年金病院リハビリテーション室 田中尚喜)
 7.ストレッチぽールと腰痛  (川口工業総合病院リハビリテーション科 鈴木俊一)
 8.マッケンジー・メソッドと腰痛  (セサミカイロプラクティクス 仲井康二)
 9.SPAT 超短時間骨格矯正法と腰痛  (誠快醫院 鹿島田忠史)
10.スポーツ選手と腰痛  (ケアステーション 村木良博)
11.太極拳と腰痛  (統合鍼灸治療院 元気  鵜沼宏樹)
12.経筋に対する活法(経筋伸張法)と腰痛  (明治国際医療大学附属病院
                               総合リハビリテーションセンター 松本和久)
13.経絡指圧と腰痛  (経絡指圧普及会 藤崎信行)
14.ヨガと腰痛  (UNDER THE LIGHT YOGA SCHOOL 中村尚人)
15.ディープティシュー・マッサージと腰痛  (ワキ鍼灸マッサージ整骨院 広橋憲子)
16.ピラティスと腰痛  (Pilates Lab 代官山/スポーツ・栄養クリニック 武田淳也)

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 1.PNFと腰痛

 PNFとはProprioceptive Neuromuscular Facilitation(固有受容性神経筋促通法)のことで、 簡単に言えば、筋肉や腱などに適切な刺激を加えることにより中枢神経系の働きを高める方法です。 これは、本来理学療法士がリハビリで行っていることですが、この治療院では鍼灸治療と組み合わ せて腰痛治療を行っているとのことです。

 「患者本人が姿勢や生活様式を変えて、自分の体と向き合うようにしてもらいます。体を知ることが できると、痛みが起こっても患者が自分で何をすべきか振り分けていくようになります。」

 これは腰痛を予防するという意味では非常に重要なことだと思います。しかし実際には、正しい体の 使い方を学んでもらうのは、なかなか難しく根気のいることです。整形外科医の悪いところは、ここに きちんと時間をかけないことではないでしょうか。

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 2.オステオパシーと腰痛

 オステオパシーがどんなものかについては、この Web site の別のページでも簡単に解説してありますので、そちらを参照して下さい。 (⇒オステオパシー

 「治らない理由の大部分は、診断が間違っているか、患者自身が再び機能障害を起こすようなことを毎日 やっているからです。それを正さなければどうしようもない。」

 まさにその通りです。それではどうしたら良いか? その答えの一つがこの本の最後にある「ピラティス」 の章で述べられています。

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 3.キネシオテーピング法と腰痛

 キネシオテープは固定のためのテーピングとは異なるものです。どういう理屈で効果があるのか良くわかりません。 でも、なぜかスポーツ選手はよくしています。

 「筋肉(皮膚)とほぼ同じ伸縮性を有する伸縮性テープを・・・」

 同じ伸縮性とは、同じ力を加えたとき同じだけ伸びるということですが、それをテストしたのでしょうか? それに筋肉と皮膚とは伸縮性が違うはずなのに、「「筋肉(皮膚)」とまとめて書いてあるのも変です。

 「キネシオテープを貼ることによって、リンパ液と血液の流れが良くなります。」

 これは実際に試験結果にもとづくものなのでしょうか?リンパの流れをどうやって測定したのでしょうか?

 「(私は)体の中の60〜70%以上を占める水をうまく循環させることで病気を治す「流体筋膜論」という 理論を構築しました。

 体の水の多くは細胞内にあります。いったいどうやって循環させるというのでしょう?もし仮に水を循環 させることができたとして、それで病気はなおるのでそしょうか?腰痛はなおるのでしょうか? 

 「ほとんどのケースで痛みが皮膚に非常に近いところから出ていることがわかります。」

 われわれは体の内部を指し示すことができないので、体の深部にある痛みも体表に投影しているだけです。

 「スポーツ選手がどうしてキネシオテープを愛用するか・・・キネシオテープを貼ることで不安感が取り除かれ、その人が最大限の力を発揮することがで きるからなのです。」

 これは、キネシオテープの効果がプラセボにすぎないという可能性を示したものです。プラセボ以上の効果 があるとするなら、きちんとした比較試験を行うべきです。もし、そのような論文があるなら教えてほしいものです。

 「私はいわゆる体内の温暖化が様々な病気の原因だと考えました。・・・ これを元に戻すには、細胞間のすき間を開けて、熱を開放させて、動きを取り戻すようにする必要があります。」

 「細胞間のすき間を開ける」って、いったいどういうこと?通常の医学的常識とあまりにもかけはなれた内容 なので、私には良く理解できません。

 私は今までキネシオテープの効果は「皮膚知覚を介して筋肉にフィードバックをする」ことによるのだろうと 思っていましたが、開発者の説明とはちょっと違っていました。私は効果を否定はしませんが、プラセボ効果だけではなく 本当に効果があるかどうかの結論を出すためには、きちんとした試験を行うべきでしょう。試験の方法は是非、開発者本人 にも考えて頂きたいと思います。なんといっても数多くの症例をかかえているはずですから。

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 4.カイロプラクティクと腰痛

 カイロプラクティクがは背中をボキボキやるというイメージがありますが、どのようなものかについては この Web site の次項を参照して下さい。(⇒カイロプラクティク

 「たとえ痛みがなくても椎骨の異常や椎間の可動性の低下は、いずれ身体のどこかに不具合を生じさせる原因に なるということです。」

 腰椎の椎体の可動性が小さい場合は、かえって安定していて痛みの少ない場合も多いようです。 (これが日常生活に不自由を感じる場合もありますが。)

 「腰椎では5つの腰椎のうち3つしか正常に可動していない場合などがあります。逆に1つの腰椎だけ 動きすぎていることもあります。・・・可動性と不安定性、安定性と可動性減少と相反する矛盾をはらん でいます。」

 確かに、腰椎に1ヶ所可動性が大きい部分があると、その部位の椎間関節や椎間板の変性が起こりやすいし、 逆に腰椎の固定術を行うとその隣で腰椎が不安定になることがあります。(ただ、安定性と可動域減少とは 相反するものではないと思いますが・・・・。)

 この章の担当であるカイロプラクターの評価されるところは、カイロプラクティクで全てを治そうというのではなく、 痛みの原因がどこにあるかによって治療法を選択していることです。

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 5.軟部組織に対する手技療法と腰痛

 この章では腰痛に対する3つの治療法が述べられています。これを簡単に説明します。

@ASTR(Active Soft Tissue Release) トリガーポイントに力を加えて、硬結を取り除く方法。
ASNAG トリガーポイントがある筋肉に関係する、動きの悪い椎間関節(棘突起)を押圧しながら、患者に痛みが
  強くなる方向へ 体動してもらうテクニック
  (カイロプラクティクやオステオパシーの直接法と同様な方法と思われます)
Bカウンターストレイン 緊張した筋肉を弛緩させることで筋肉のスパズムを改善する治療法。(オステオパシーの
  間接法と同様な方法と思われます。)
 

 「・・・変形性脊椎症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離・すべり症、骨粗鬆症などの診断名がついている患者 でも、実際に筋のトリガーポイントを見つけて、それをASTRで治療してみると、かなりの患者の症状がよくなります。もしくは 治ってしまいます。」

 要するに、腰痛の多くは原因が何であれ筋膜性のものだということです。トリガーポイントはその筋肉の 疼痛の中心となる部分であり、ここを治せば多くの腰痛を治せるということです。これは私も同感で、本章では トリガーポイントブロックの代わりに徒手的な治療を行っているわけで、治療している内容は同じだと思います。

 「漢方薬は、昨日ぎっくり腰になったというような急性期ではなく、数か月前から悩んでいるという慢性の 患者に使います。」

 漢方薬は慢性の腰痛に対して八味地黄丸や桂枝加芍薬湯などが有効ですが、急性の場合にも有効なものがあります。 たとえば、筋肉の痙攣をともなうような腰痛に対しては芍薬甘草湯、打撲や捻挫の急性期には三黄瀉心湯や桂枝茯苓丸 などが有効な場合があります。漢方薬は慢性の場合と急性の場合とはどうも働き方が異なるようです。

 「やはり手術をするしか方法がないなら、手術することも大事だと思っています。ですが、手術しないで済むなら、 しないほうがいいですよね。また手術をするからには、良くなるという見通しがないと、行ってはいけないと思うんです。」

 まさにその通り! 整形外科医や脳外科医の中には画像診断を主眼において手術に傾く人もいるし、 逆に手技療法のみを行っている施術者の中には手術を全く否定する者もいる。これは両極端だと思います。

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 6.大臀筋の秘密と腰痛体操

 この章は理学療法士が担当しており、代替医療というよりも西洋医学の基礎である解剖学に基づく 運動理論により、腰痛の治療法を説明してあります。が、いくつか疑問点もあります。  

 「背部の腸肋筋、最長筋、棘筋といった表層の筋肉は回旋や伸展にかかわります。一方、深層の 脊柱起立筋は回旋もしなければ伸展もしない。ただ単に腰椎を固定している筋群です。」

 腸肋筋・最長筋・棘筋を合わせて脊柱起立筋と呼ぶのではないでしょうか?  

 「腹筋が弱体化しても、背部の表層の筋肉は回旋などで使われますが、横突間筋、棘間筋、回旋筋などの深部の 脊柱起立筋は使われず、硬くなってしまいます。これが腰痛の原因となっています。」

 横突間筋、棘間筋、回旋筋は脊柱起立筋には含まれません。これらの筋肉は側屈・背屈・回旋などの際に働く はずです。また、腰痛は脊柱起立筋の痙縮でも生じ、その部位によって症状が異なります。また、多裂筋や腰方形筋 も腰痛の原因となることが多いのですが、これについては全く触れていません。前述のことも合わせて判断するに、 腰背部の筋群に対しての理解が間違っているのでは無いでしょうか?  

 「歩行には大腿四頭筋が重要だと思っている人が多いのですが、大腿四頭筋は膝が大きく曲がらないようにしている だけです。」

 膝が大きく曲がらないようにしているということは、大腿四頭筋が体を支えているということなので、やっぱり 大腿四頭筋は歩行に重要だと思いますが。確かに大臀筋が体重移動の推進力を担っているのは確かですが、大臀筋 だけでは体重は支えられません。みなさん、学校の体育やクラブで長距離を歩いたり走ったりしたとき、どこの筋肉 が痛みましたか?おしりですか、それとも太ももですか?それを考えれば正解がわかるはずです。  

 「腰が痛いという人の中には、背中がまっすぐで、骨盤だけが曲がっている人がいます。これは大臀筋の劣化に 起因しているのです。」

 このような状態について、私は次のように考えています。@下位腰椎の主として多裂筋の筋力が低下して 腰仙部が後弯してくる ⇒A骨盤が前傾するので、股関節が伸展位になり大臀筋の緊張が低くなる  ⇒B大臀筋の筋力が低下する。すなわち、大臀筋の劣化は原因ではなくて結果なのだと思います。 また、広範囲の腰部脊柱管狭窄症では大臀筋の委縮が目立つ例が多々あります。これも、大臀筋の劣化は結果です。 いっぽう、変形性膝関節症などでは膝をあまり曲げずに歩くので、当然大臀筋の負担が大きくなり大臀筋の過緊張・ 疼痛が出現し、これが腰痛と認識されることも多いようです。  

 大臀筋の他にも大腿内転筋やヒラメ筋の強化が腰痛予防に有効であると説明しています。たしかにそうだとは 思いますが、他にも重要な筋肉があるでしょう、と言いたい。それから、大臀筋の強化法の説明写真がありますが、 この方法は多裂筋などの筋力強化にもつながるので、腰痛の予防効果が大臀筋を強化したことによるのか、または 多裂筋を強化したことによるのか、紛らわしいと思います。これを確認するには、大臀筋のみを選択的に強化する 方法を試みて、それと比較したら良いと思います。

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 7.ストレッチポールと腰痛

 この章も理学療法士が担当しています。最初、ストレッチポールを "stretch ball" と思って いたのですが、そうではなくて "stetch pole" なのです。(ポとボの読み違いです。)いっぽうバランスボールは "balance ball" です。紛らわしい。  

 「オーバーユースや腰痛などで硬化している組織は・・・この部分をストレッチしようとしても、 柔らかい筋線維だけが伸びて、硬いところはうまく伸びてくれません。」

 このことが当てはまるのは、硬い組織と柔らかい組織が直列になっている場合です。でもその場合、実は硬い 組織にはあまりストレスが加わらないので痛みは生じにくいはずです。一方、臨床的に問題となるのは硬い組織と 柔らかい組織が並列にある場合です。この場合、ストレッチを行おうとしても硬い組織だけに過度のストレスが加わり、 疼痛や組織の損傷を起こす場合があるのです。硬いところを最初にリリースして筋全体をストレッチするという ことを言いたいのは解りますが、説明がちょっとまずいと思います。  

 ストレッチポールは実に単純な器具です。でも使い方によっては効果の出そうなエクササイズがいろいろと あるようです。

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 8.マッケンジー・メソッドと腰痛

 マッケンジー体操(マッケンジー・エクササイズ)は別のページでも解説していますが (⇒マッケンジー体操)、 これは一人でできるもので、マッケンジー・テクニックは施術者を伴う方法です。これら の基本的な考えがマッケンジー・メソッドです。   

 マッケンジー・メソッドでは疾患を、@姿勢症候群、A機能不全症候群、B内障症候群の3つの タイプに分類しています。姿勢症候群は病理的・機能的な問題がなく、不自然な姿勢が疼痛を引き 起こすタイプです。機能不全症候群は瘢痕組織などにより関節や軟部組織の機能が低下して疼痛を 引き起こすタイプです。内障症候群は病理的(ヘルニアや炎症)異変による疼痛タイプで、ほとんど がこのタイプです。

 この3つの分類によれば、疲労による腰痛は@、高齢者の腰痛はA、ぎっくり腰はBに相当するのでしょうが、 実際には明確に分類することは難しいと思います。

 この3つの分類を、指をそらして生ずる痛みを例にとって説明しています。指を反らしていって最初は@、 もっと反らして機能低下を起こした状態がA、さらに反らして指が損傷した状態がBに相当するといっていますが、 AとBとは単に程度の違いではないはずです。この指の例は、適切ではないと思います。

 

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 9.SPAT超短時間骨格矯正法と腰痛

 この章は馴染みのない内容なので、そのまま抜き出しておきます。

  SPATとは ” Soutaihou-based Postural Adjustment Technique(操体法をもとにした骨格矯正法)” の略です(⇒操体法)。 ・・・まず動診で仙腸関節の歪みを判定します。次に筋トーヌスを操体法で軽減します。そして最後に、骨盤 を矯正して、歪みを改善するSPAT骨格矯正法を行います。この動診、筋トーヌスの緩和、骨格矯正からなる一連の 流れを総称してSPATと定義しています。  

 この内容を一つずつ検証してゆきます。まず、仙腸関節の歪みを判定する方法として、”動診”という方法を用いて います。これは”操体法”において、どのような関節の動きで快不快が出るかを調べる手法です。しかし、関節の 感覚というのは関節そのものだけではなく周囲の靭帯や筋肉も含めてのものですから、関節の歪みと筋肉のトーヌス を分けて考えるのは困難だと思います。また、骨格矯正というのは徒手的には困難で、これも筋肉のトーヌス に影響を受けるはずです。したがって、筋トーヌスの緩和と骨格矯正を分けて考えるのも不自然です。  

ちなみに、 ”操体法”というのはオステオパシーの直接法と間接法を連続的に行うことに近いと思われます。

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 10.スポーツ選手と腰痛

 この章では特定の治療法については述べられておらず、腰痛治療の一般的な話となっています。  

 「前屈で痛みが出たら髄核の脱出などヘルニアが疑われます。後屈で痛みが出たら腰椎分離などの 問題が考えられ、・・・」

 前屈や後屈で痛みがでるのは、それほど特異性のあるものではありません。単なる筋膜性腰痛でも 筋肉の部位によっては同じことが起こります。  

 「中臀筋や腸腰筋の緊張を解くと、腰方形筋などへの負担も減り、腰の痛みが改善する 場合があるのです。」

 中臀筋や腸腰筋と腰方形筋の関連は理屈で考えるとそうかもしれないと思いますが、 実際には関連して痛んでいる例はそれほど多くは無いようです。  

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 11.太極拳と腰痛

 太極拳が具体的にどのように腰痛に効果があるかについては詳しく述べられていませんが、 取り上げられている2つの運動については、体幹筋と股関節周囲のストレッチに有効のようです。  

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 12.経筋に対する活法(経筋伸張法)と腰痛

 この章で紹介されている治療は主に鍼と経筋伸長法といわれる筋肉のストレッチを併用したものです。 さすがに明治国際医療大学の准教授だけあって、疼痛に関する理論的な背景を詳しく説明しています。  

 患者さんの状態によってどこまでストレッチをすべきかどうかの判断はできない。西洋医学では 無理です。

 そんなことありません。局所の症状をきちんと見極めれば西洋医学の範囲でも判断できます。 もっとも、画像診断に頼ったりすると途端に行き詰まりますが。  

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 13.経絡指圧と腰痛

 経絡指圧とは、鍼治療を行うようなツボ(経絡)に手や指で刺激を加える指圧です。 経絡については一部でトリガーポイントと一致するものがあります。  

 腰痛症は・・・腸腰筋が攣縮し、その結果、腰椎が腹側に引っ張られ、その靭帯が伸ばされることで 痛みを発する。

 たしかに腸腰筋が攣縮して生じる腰痛もあるようです。Psoas Compartment Syndrome についての 論文を目にしたことがあります。ただ、これによって腰椎が腹側に引っ張られるとか、それによって 靭帯が伸びて痛みが出るというのは、ちょっと理解ができません。強い腰痛ではむしろ腰椎が真っ直ぐ になっています(生理的前弯の消失)。また、腰痛は腸腰筋以外の様々な筋肉でも引き起こされます。   

 腹部を念入りに按圧することで、腹部の筋肉を弛緩させて、ズレた腰椎を元の位置に整復すること ができると考えている。

 本当にそんなことできますか?   

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 14.ヨガと腰痛

 ヨガというと、傍目から見れば無理なポーズをとってじっとしていることのように思ってしまいますが (これは私の偏見?)、実はそのポーズの中で筋肉は十分に弛緩しているとのことです。  

 筋の問題は多くが主動筋と拮抗筋の偏りが原因です。・・・そこでIa抑制を適正に働かせるヨガを すると、偏りが是正されるのです。・・・腰痛の原因は筋のアンバランスによるところが大きいので、 以上のような理由で、ヨガは効果的なのです。

 Ia抑制を適切に働かせるということは簡単に言えば、通常の筋肉の状態より緊張を下げた状態で 筋肉を伸縮させることです。確かに、筋肉の緊張が筋膜性腰痛の根本ですから、これは理に適った ものと言えるでしょう。(でも、線維化した硬い筋肉ではそのようなことが困難だと思います。)   

 腰痛の発症には日常生活における習慣性の不良姿勢が関係していますので、ヨガで自分自身のこと がわかれば、改善できるし、予防することもできる。

 これは、アレクサンダー・テクニーク、ピラティスなどでも同様のことが言われています。 「自分自身の悪いところがわかって、それを直す。」というのが、一番大切なことのようです。  

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 15.ディープティシュー・マッサージと腰痛

 ディープティシュー・マッサージは簡単に言うと、深部組織に対するマッサージのこと。 この章を担当する広橋憲子氏が翻訳した「ディープティシュー・マッサージ 深部組織に対する マッサージ理論とテクニック」の著者Art Riggsはロルフィングの考え方を取り入れたものです。 ( ⇒ロルフィングとは)  

 腰痛患者でも身体の浅部の硬結だけを取るよりは、深いところにアプローチして、深部の 硬結を取ったほうがバランスの取れた身体になりやすいのです。

 それはそうです。腰部の様々なトリガーポイントは実は深いところにあるのです ⇒参考。  

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 16.ピラティスと腰痛

 ピラティスとは考案者Joseph H. Pilates(ドイツ人)の名前からとったものです。 ピラティス自身はContrology(コントロール学)と名付けたもので、これは適切な エクスサイズを繰り返すことにより、無意識に自分自身の正しい心身の使い方がで きるようにする方法です(⇒Wikipedia 日本語版は あまり詳しいことが書かれていないので英語版を参照しました)。別のページで取り上げた アレクサンダー・テクニーク と非常に近いものがあります。インターネットで検索すると、美容・ダイエットに関連した ものが多く、ヨガと同様な扱いになっているようですが、本来の概念とちょっとずれてきて いるように思います。  

 「身体を80度伸展(後屈)させる際、もし頸椎だけを使うなら、7個の頸椎を各平均11度も 動かさないといけません。では、頸椎と胸椎の両方を使って身体を80度伸展(後屈)させると どうなりますか。頸椎と胸椎では骨が合計19個あるので、椎骨1つあたり平均4度ですみます よね。」

 頸椎と胸椎は動き方が全く違うし、頸椎の中でも1番目2番目の間とその他とはずいぶん 動き方が違います。また胸椎を反らそうとする場合、必ず腰椎も反ってしまうのが普通です。 きっと胸椎も動かすようにということを言わんがために誤解を恐れずにこのようなことを 言ったのかも知れません。  

 「腰痛では腹横筋が大事ですね。」

 高齢者、特に腰が曲がった人のなかには腹横筋を痛がる人が時々います。横腹が痛くて 内科へ行ったけれど、どこも悪くない言われて整形を受診する人がいます。  

 「頭でわかっていても人は行動が伴いません。フィードバックや認知教育が必要です。 ・・・正しい姿勢と動きを無意識化させていくのがピラティスなんです。」

 これは全てのスキル(スポーツや楽器演奏あるいは手術など)をマスターする基本です。 腰痛を起こさないようにする体の使い方も例外ではありません。  

 「もっとも私もピラティスだけですべてが解決できると思っていません。・・・ 患者も医療従事者も1つの治療法だけに頼りすぎないようにすることが最も大切だと私は思っています。」

 私もそう思います。  

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